2019/04/04 19:39





『遠い昔、まだ私が幼かった頃。 ブルームーンの夜には妖精たちが人の世に現れる.. そのいい伝えを信じて探しに出掛けた私は紫陽花の茂みの近くで彼女を見つけた。 いまとなっては眠ったまま、昔のように飛び回ることもなく…』





『紫陽花のところにいたから、君は紫陽花の妖精なんでしょう? と彼女に聞いたことがある。 そうしたら彼女は笑って、 "そんなこと考えもしなかったけれど、そうかもしれないわね"と言った。 "自分の羽根の色に似た青い紫陽花が好きなのよ" だからいつ目覚めても見られるよう彼女のそばに紫陽花を飾って… 』 




『ある日、目の悪い友人に"彼女"を見られてしまった。 "おや、それは蝶の標本かい?" 彼にはそうだ、と適当にいって誤魔化した。 確かにそう言われて見れば標本に見える。 それならばと、ちょっとした遊び心で手書きでラベルを書いた。 ブルームーンの時に見つけたので"Blue moon fairy" その下に彼女を見つけた場所、"紫陽花"と。 目覚めたら彼女は目を丸くして"これはなぁに?" と面白がって笑うだろう』 


-『妖精標本』より-


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少し前に作った紫陽花の妖精の物語。


今はこの世にいない、おじいさんの残した『妖精標本』という本に書かれていたストーリー。


少年のころに出会った妖精との絆について書かれています。


妖精標本という本と、紫陽花の妖精さんは筆者が亡くなったあとも、大事に大事に筆者の子や孫に引き継がれていくのでしょう…


いつかまた妖精さんの目覚めるそのときまで。